1970年代後半におけるハーレーダビッドソンは、親会社であるAMF(American Machine and Foundry)の傘下で試行錯誤を繰り返していた時代でした。品質面の課題から批判を受けることも多かった時期ですが、一方でその後のブランドイメージを決定づける歴史的なアイコンが相次いで誕生した革新のフェーズでもありました。
特に1977年から1978年にかけて行われた一連のモデル投入や仕様変更は、現在のハーレーのスタイルを方向づける上で極めて大きな意味を持っています。
1977年から1978年にかけた大きな変化
この時期のハーレーダビッドソンにおける最大の転換点は、自社の既存パーツを組み合わせる「パーツビン(パーツ棚)」手法を用いたカスタムスタイルの製品化でした。社内のデザイン部門を率いていたウィリーG・ダビッドソンを中心とするチームは、ストリートのカスタムカルチャーを素早く察知し、それを工場出荷状態の量産車として昇華させたのです。
1977年に登場したモデルたちは、単なる年式変更の枠を超えて、全く新しいカテゴリーを提示することとなりました。
伝説的モデル「FXS ローライダー」の誕生
1977年に登場した「FXS Low Rider」は、ハーレーの歴史において最も成功したモデルのひとつとして数えられます。ビッグツインのフレームに軽量なスポーツスターのフロントエンドを組み合わせるFXシリーズのコンセプトをベースに、さらに低く構えたシート高(約27インチ)と32度のキャスター角が設定されました。
FXシリーズとして初めてキャストアルミホイールを採用し、2in1のエキゾーストパイプやドラッグバー風のハンドルを装備したこのモデルは、一躍大ヒットとなりました。1978年にかけてシート形状のアップデートやグラフィックのマイナーチェンジを受けつつ、同社の主力車種としての地位を確立していきます。
異端のカフェレーサー「XLCR」の挑戦
ローライダーと同年の1977年、もうひとつの野心的なモデルとして「XLCR Café Racer」が送り出されました。スポーツスターの1000ccエンジンをベースに、ビキニカウル、細身のガソリンタンク、シングルシート、マフラーを左右に配した排気システムを搭載しています。
直線重視のハーレーが本格的なカフェレーサー市場へ参入するという大胆な試みでしたが、当時の市場における反応は芳しくなく、1977年から1979年までの短期間で製造を終了しました。しかし、その先進的で独特なスタイリングは現在において極めて高く評価されており、コレクターズアイテムとして確固たる地位を築いています。
エンジンと基本スペックの推移
この時代の動力系を支えていたのは、1200cc(74キュービックインチ)の「ショベルヘッド」エンジンです。1977年から1978年にかけては、主にケイヒン製キャブレターへの移行や細かな電気系の刷新、点火系の見直しなど、信頼性と扱いやすさを向上させるための微修正が積み重ねられました。
1978年の終盤(1979年モデル)からは80キュービックインチ(1340cc)エンジンが登場することになりますが、その前夜となる1977〜1978年のマイナーチェンジ期は、熟成された1200ccショベルヘッドのポテンシャルをストリートカスタムへ極限まで落とし込む試みが行われていた時期といえます。
1977年から1978年のマイナーチェンジおよび新モデル展開は、親会社AMFのもとで暗雲が立ち込めていた当時のハーレーダビッドソンにおいて、デザインの力でブランドの新しい可能性を切り拓いた重要なエピソードです。
https://nationalmcmuseum.org/2019/11/22/1977-harley-davidson-fxs-low-rider/
https://www.lowbrowcustoms.com/blogs/events-features/harley-davidson-amf-years
https://bobberbrothers.com/pages/7-infos-about-the-harley-davidson-low-rider/