気温40度。日本でも近年は猛暑日という言葉でおなじみになりつつありますが、アメリカのネバダやアリゾナ、デスバレー周辺の砂漠地帯では、これが夏の日常的な数字になります。バイク乗りにとって、40度という環境はもはやツーリングというより一種のサバイバルです。
そんな過酷なエリアで日常的に走っている現地ライダーたちは、どのような工夫でこの熱波をしのいでいるのでしょうか。日本の夏の走り方とは一味違う、科学的かつワイルドな酷暑ハックをご紹介します。
気温が体温を超えたら「ジャケットのチャックを閉める」
暑い日にバイクに乗ると、ついメッシュジャケットを着たり、ベンチレーションを全開にして風を入れ込みたくなりますよね。しかし、気温が体温(37度)を超えると、走る風は涼しさを運ぶ存在ではなくなります。完全に「巨大なヘアドライヤーの熱風」です。
熱風を体に浴び続けると、汗が気化熱を生む間もなく瞬時に蒸発し、体温が急上昇してあっという間に脱水症状を引き起こします。そのため、現地ライダーの間では「体温を超えたら風を遮断する」のが鉄則です。
あえて風の通り道を絞り、長袖の速乾インナーと薄手のオールシーズンジャケットで肌を覆うことで、直射日光と熱風による侵入をシャットアウトします。外気を直接肌に触れさせないことこそが、最大の防御になるのです。
ガソリンスタンドで「服ごと水浸し」にする
湿度が非常に低い乾燥地帯だからこそ、劇的な効果を発揮するのが「気化熱の強制利用」です。
現地のツーリングでは、ガソリンスタンドに寄るたびに水道でTシャツやネックバンダナをびしょびしょに濡らし、そのまま着込むスタイルが定番となっています。40度を超える乾燥した風の中を走ると、その水分の蒸発スピードは凄まじく、まるでエアコンの風を浴びているかのような強力な冷却効果が得られます。
また、専用のクーリングベストを活用したり、背負うタイプのハイドレーションバッグに氷をパンパンに詰めておき、背中を直接冷やしながら走るアイデアも一般的です。走行中にチューブからこまめに給水できるため、喉の乾きを感じる前に水分補給ができるメリットもあります。
前日からの「ウォーター・ローディング」
汗が瞬時に乾いてしまう環境では、自分がどのくらい水分を失っているのか自覚しにくいのが一番恐ろしいポイントです。そのため、当日に喉が乾いてから水を飲むのではまったく追いつきません。
ベテランライダーたちは、走る前日から水分とスポーツドリンクなどの電解質を意識的に摂り溜めておく「ウォーター・ローディング」を行っています。身体の細胞にあらかじめ水分を蓄えておき、走る当日の早朝から万全のコンディションで挑むわけです。
さらに、日中の危険な時間帯(12時〜16時)は絶対に走らず、日の出とともに走り出して午前9時頃には走行を終えるという、大胆なスケジュール管理も徹底されています。
まとめ:熱風をブロックし、気化熱を味方につける
アメリカの酷暑地域におけるライディングの知恵は、極めて理にかなっています。
- 直射日光と熱風は遮断する(服を着る)
- 気化熱を最大限に利用する(水に濡らす)
- 前日から体内に水分を溜めておく(事前補給)
日本の夏も年々厳しさを増しており、湿度の違いこそあれど応用できる考え方はたくさんあります。「暑いから脱ぐ」のではなく「暑いからこそ身を守る」意識で、安全に夏のライディングを楽しんでいきましょう。
参考:Keeping cool: Tips for riding a motorcycle in hot weather