ハイロマー ユニバーサル ブルー

Hylomar Universal Blue(ハイロマー・ユニバーサル・ブルー)は、イギリスのHylomar社が製造する、世界的に極めて知名度の高い非硬化型の液体ガスケットです。

最大の特徴は、塗布後も完全に固まることがなく、常に柔軟な粘土のような状態を維持し続ける点にあります。そのため、振動や熱膨張による歪みに非常に強く、将来的な分解・メンテナンスもスクレーパーで削り落とすような苦労をせずに、アセトンなどで簡単に拭き取ることができます。

元々はイギリスのロールス・ロイス社の航空宇宙部門が、ジェットエンジン(ガス(蒸気)タービン)の接合部を確実にシールするために共同開発したという、非常に輝かしい歴史を持っています。

独自の化学的アプローチ

一般的な液体ガスケット(RTVシリコンなど)は、空気中の水分などと反応してゴム状に「硬化」することでシール性を発揮します。

しかし、Hylomar Universal Blueはポリエステル・ウレタンをベースにしており、塗布後に[溶剤]が蒸発すると、微細な粒子が緻密に絡み合った、永久に塑性(形状が変わり、元に戻らない性質)を持つ青いジェル状の層を形成します。固まらないため「位置調整のための組み立て時間が無限(組む焦りがない)」という、ビギナーからプロまで非常に扱いやすい特性を持っています。

主な特徴とスペック

  • 対応温度域:-50℃から250℃まで
  • 非硬化性:長期間、熱に晒されてもカチカチに硬化しません
  • 優れた流体耐性:ガソリン、軽油、各種オイル、水、クーラント(LLC)、メタノール混液、さらにはエンジンの燃焼ガスに対しても高い耐性を持ちます
  • 金属接触の維持:塗布しても金属同士のダイレクトな接触を妨げないため、構造的な接合強度を保ちながら微細な隙間(マイクロ・ギャップ)だけを埋めることができます

代表的な用途

  • 自動車やバイクのエンジン、産業機械など多岐にわたる
  • ウォーターポンプやオイルポンプの接合部
  • インテークマニホールド、タイミングチェーンカバー
  • ギヤボックス、トランスミッションの合わせ面
  • シリンダーヘッドや平らなオイルパン
  • 成形済みの固形ガスケット(紙やメタル)の表面に薄く塗るドレッシング(補助剤)としての使用
  • 各種ネジ部・配管のシール

使用時の注意点

本国のテクニカルデータ(TDS)によると、塗布する面を事前にしっかりと洗浄・乾燥させた後、薄く均一に塗布します。塗布後、中の溶剤がしっかり蒸発するまで数分待ってからパーツを組み付けます。
なお、非硬化型という特性上、組み付けた後にボルトなどを指定トルクで締め付けた際、少し時間を置いてから再度適正トルクで増し締め(確認)することが推奨されています。

使用している溶剤(キャリア溶剤)

Hylomar Universal Blueにおいて、溶剤はベースであるポリエステル・ウレタンを液状に保ち、隙間に薄く均一に塗布できるようにするための「運び屋(キャリア)」の役割を果たしています。

主成分はジクロロメタン

本国の安全データシート(SDS)によると、Universal Blueに使用されている溶剤はジクロロメタン(Dichloromethane / 別名:塩化メチレン)です。製品全体の25%〜65%の割合でこの溶剤が含まれています。
ジクロロメタンを採用していることで、以下のような独特のメリットと性質が生まれます。

  • 不燃性(Non-flammable)であること:ジクロロメタン自体が不燃性であるため、液体ガスケットそのものも不燃性となり、火気のある工場や高温の環境でも安全に塗布作業が行えます。
  • 極めて高い揮発性:非常に乾きが早く、塗布した後に数分放置するだけで、ベースとなる青い粘弾性ポリマーだけを素早く表面に残すことができます。

【参考】派生製品「Hylomar M」との違い

本国の情報において、この溶剤は非常に重要な位置づけにあります。ジクロロメタンは環境規制や健康への配慮(有機溶剤としての規制)が厳しいため、Hylomar社はUniversal Blueの技術をベースにしながら、溶剤をアセトン(ノン・クロリネイト/非塩素系炭化水素溶剤)に変更した「Hylomar M」という製品も製造しています。
乾燥した後のシール性能や非硬化特性はどちらもほぼ同じですが、オリジナルである「Universal Blue」はジクロロメタンを使用していると覚えておくと、業界の仕様書を読む際に役立ちます。

シェルフライフ(保管寿命)

製品が製造された日(Date of manufacture)を基準として、以下の寿命が定義されています。いずれも未開封のオリジナル容器である場合が条件です。

  • チューブ、カートリッジ、レバー缶(1L缶など):2年間(24ヶ月)
  • ハケ付き缶(Brush Top Tins):1年間(12ヶ月)
    ハケ付き缶は構造上、気密性がチューブなどよりわずかに劣るため、寿命が短く設定されています。

正しい保管条件

本国データでは、シェルフライフを全うするために以下の環境で保管することが厳格に求められています。

  • 温度範囲:5℃から25℃の間
  • 環境:直射日光を避け、湿気のない涼しく乾燥した場所
    この範囲外の温度(特に高温)や直射日光、湿気のある場所に保管した場合、未開封であっても溶剤が変質・揮発し、シェルフライフの保証対象外となります。

製造年月の見分け方

本国品には7桁の番号が記載されており、ここから製造年を特定できます。

  • 最初の2桁:製造年(例:「26」であれば2026年)
  • 次の2桁:製造月(例:「07」であれば7月)
  • 最後の3桁:そのバッチの固有識別番号

開封後の注意点(非硬化型ならではの特性)

Hylomar Universal Blueは、空気中の水分などで化学反応を起こして固まるシリコンとは違い、「溶剤が抜けること」でジェル状になります。
そのため、一度開封したチューブであっても、キャップを隙間なく完全に閉めて溶剤(ジクロロメタン)の揮発を防いでさえいれば、容器内でカチカチに固まって使えなくなるということは基本的にありません。ビギナーがたまにしか使わない場合でも、長持ちしやすいという隠れたメリットがあります。


原典:https://hylomar.com/product/universal-blue/
https://hylomar.com/wp-content/uploads/2024/08/Hylomar-Universal-Blue-TDS-1.pdf
https://hylomar.com/wp-content/uploads/2024/08/Hylomar_Product_Shelf_Life-1.pdf

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